お知らせ
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作成日:2018/02/14
まだ間に合う!「働き方改革」への対策



 

20194月施行が予定される「働き方改革関連法案」。
対策が迫られる経営者の方にそのポイントと求められる実務対応を紹介します。

現在も国会で審議されている「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」。過重労働対策と同一労働同一賃金を含む、8つの法律の改正が一括で行われます。

 

今回の労働基準法等改正のポイントとなるのが、
労働時間上限設定関連勤務間インターバル制度年次有給休暇
高度プロフェッショナル制度フレックスタイム制裁量労働制の6つです。

 


【労働時間上限設定関連】
法律案要綱ではこれまで事実上、上限のなかった36協定に労働時間の上限規制を設ける方針が示されています。

 

具体的に見ていきましょう。

@   延長時間:45時間、年360時間(年変形の場合は月42時間、年320時間)の限度時間以内

Ø  現在設定されている3ヶ月120時間など、1ヶ月・1年以外の限度時間は廃止。

A   特別条項を締結する場合においても、上回ることができない年間の時間外労働時間を1720時間(月平均60時間)とする。

B   Aの1720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける。

Ø  単月では100時間未満、26ヶ月平均では80時間以内(法定休日労働を含む)



つまり、年に
6ヶ月は残業を45時間以内に収めないと直ちに違法となるので、
慢性的に45時間を超えているような状態は解消する必要があるということです。 


Bの場合は
「法定休日労働時間」も加算して管理する必要があるので、労働時間把握を徹底した上で、即座に社員の残業等の状況を確認できる仕組みが不可欠となります。


さらに、これまでの適用除外の見直しも示されています。

  工作物の建設等の事業

改正法施行期日の5年後に、罰則付き上限規制の一般則を適用する。ただし、復旧・復興の場合については、単月で100時間未満、2か月〜6か月の平均で80時間以内の条件は適用しない。

  自動車の運転の業務

改正法施行期日の5年後に、年960時間以内の規制を適用する。但し、月45時間を超える月数の制限は適用しない。

  新技術、新商品等の研究開発の業務

健康確保措置を前提とし、適用除外を継続。

  医師(追加)

改正法施行期日の5年後を目途に、何らかの規制を適用する。



その他の指針として

 

  特別条項の締結にあたっては、指針に規定される健康確保措置を定めること。

  指針には、時間外労働および休日労働を可能な限り抑制する努力義務が定められる。

 

 とも定められているので、今後は、健康確保措置が労働基準監督署調査の重点チェック事項になることや、業務の実態に合わせてできるだけ延長時間を短くするような指導が増えると予想されます。

 
以上のような改定には、残業の申請承認制など、労働時間の基本的な仕組みの構築と徹底が重要になり、過重労働につながる傾向が強い休日労働の管理も必須となっていきます。

 

まず求められるのは管理職の働き方改革です。
管理職の労働時間が長い職場は、部下の労働時間も長くなる傾向が見られます。
まずは管理職の働き方改革を進め、効率的な仕事の仕方を進めていきましょう。



 

【勤務間インターバル制度】 

今話題の勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に一定の時間を空けなければならないとする制度です。


具体的な例としては、勤務終了時間から次の勤務開始時刻までの間に最低
8時間以上の休息時間を設け、社員の健康・安全・集中力の維持を図る会社もあります。

インターバルの時間数
繁忙日等の例外
休息時間が翌日の始業時刻に及んだ場合の取り扱い

 

などをしっかり決めて導入する必要があります。





 【年次有給休暇】

年次有給休暇の取得の義務化も今回示された方針の一つです。

 

◆ 年次有給休暇の日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については 付与日から1年以内の期間に、以下のいずれかの方法により与えなければならない。

     @   労働者本人の時季指定による取得
     A   労使協定締結による計画的付与
     B   労働者本人の希望を聞いた上での使用者による時季指定 

◆ 所定労働日数が少なく、比例付与の対象となっている従業員(パートタイマーなど)でも勤続を重ねた場合には、年休付与日数が10日を超える場合があることから、本制度の対象となる。

 

具体的には、年初における年休取得予定の提出と管理計画的付与制度の活用年休取得奨励(終日・半日)のような対策が求められます。




【高度プロフェッショナル制度】

高度プロフェッショナル制度とは、いわゆる「残業代ゼロ」制度で、一定の要件を満たした高度専門人材について、管理監督者同様の適用除外を認める労働制が設けられるということです。

 

対象業務は

厚労省が省令にて定める「高度の専門的知識等を要し、業務に従事した時間と成果との関連性が高くないと認められる業務」です。具体的には、金融商品の開発業務金融商品のディーリング業務アナリストの業務コンサルタントの業務研究開発業務等が念頭に置かれているようです。

 

対象労働者は

使用者との間の書面合意に基づき職務の範囲が明確に定められ、その職務の範囲内で労働する労働者であり、1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額(賞与を除く)が、1075万円以上あること。

 

効果(適用除外)として

労働基準法第4章に定める労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定が適用除外とされる。結果的には管理監督者同様時間外割増賃金等の支給が不要となる。

 

高度プロフェッショナル制度の導入にあたっては、健康管理時間の把握や年間104日以上かつ、4週を通じ4日以上の休日の確保といった健康確保措置が必須となります。

 


また、勤務間インターバル制度や1年に1回以上の継続した2週間以上の休日の付与等の項目からの選択事項の導入も必要となる。



【フレックスタイム制】

 フレックスタイム制とは、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1ヶ月以内の一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、従業員はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で柔軟に決めることができる制度です。

 1ヶ月を超える期間での繁閑の差があるケースでは使いにくかったですが、今回の改正では、清算期間の上限が3ヶ月に延長されます。なお、1ヶ月を超える清算期間を設定する場合には、労使協定を労働基準監督署に届け出なければなりません。

 

1ヶ月を超える期間での繁閑の差がある事業所において効果的です。

左の図のように繁忙期に発生した長時間労働を、閑散期に休暇を取得するなどして調整し、総労働時間である504時間に収めるということが可能になります。


特定の月での長時間労働を抑制するため、起算日から1ヶ月毎に区分した期間について、1週あたりの労働時間が50時間を超えないようにしなければなりません(超えた場合には時間外労働として割増賃金が必要です)。



【同一労働同一賃金】                                              

非正規労働者が全体の約4割を占める時代となり、その処遇のあり方の是正を目指す同一労働同一賃金の流れが強まっています。

同一労働の判断は基本的に仕事の差(職務内容・責任の程度)人材活用の仕組み(配置転換・転勤の有無および範囲)を基準として行われるので、少なくとも、これらの点で正社員と非正規従業員の差異が説明できるようにはしておきたいところです。年末年始手当や危険手当のように職務と密接に関連している手当や時間外割増賃金率の差などは不合理とされる可能性が高いと思われます。

 

また、131日に厚生労働省より「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が公表されました。そのポイントを挙げていきます。

 

Ø  原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。

Ø  労務提供上の支障、企業秘密漏洩、長時間労働を防止する観点から、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることが考えられる。

Ø  その内容によっては副業・兼業を制限することができる

Ø  複数の事業所で雇用される場合、労働時間は通算して管理する必要がある。

 

これに伴い、厚生労働省のモデル就業規則も改定されているが、企業としてはその方針の明確化が求められます。